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しかしながらその後次第に衰微して、明治時代に至っては殆ど廃寺に等しく、本堂も庫裡も腐朽し、且つ住職もなく附近の同宗浄誓寺住職廣川皆順師が兼務住職となって空名を存する有様でした。
一方その当時、現住職の曽祖父である伊藤大忍師は横浜市に一寺を建立したい志願を懐いておりましたが、その時代は廃仏棄釈の逆風強く、新寺の建立は法規によって禁じられておりました。しかしそのような中、権現堂に西敎寺という廃寺同様の寺が存在することを聞知して、それを当地に移転しようと考え、百万奔走して現在の地に275坪の敷地を買得し、36坪瓦葺の本堂と24坪板葺の庫裡を買い取って、明治36年9月に西敎寺を移転し、初代住職を拝命しました。故に伊藤大忍師は西敎寺中興の人といっても過言ではなく、中興初世として位置付けられております。
上記の本堂と庫裡は狭隙の上、古建築のため腐朽していたので、大正10年に七間四面木造瓦葺入母屋造りの新本堂を建立しましたが、大正12年の関東大震災により倒壊、約2年という御堂の歴史でした。その後暫定的な仮本堂の形態を数年経た後、昭和4年から5年に亘かけて鉄筋コンクリート造瓦葺入母屋造（62坪）の本堂と木造亜鉛板葺寄棟造の庫裡（91坪）を新築しました。この本堂は横浜初の鉄筋コンクリート造の頑丈な建物として今もどっしりとたたずんでおります。
ちなみに中興初世伊藤大忍師の来歴を簡単に述べますと、安政6年に東京浅草の真宗大谷派（当時）龍淵寺住職大住皆遵の三男として生まれました。明治8年に積徳寺住職となり、同23年2月には神奈川県教誨師を振出しに布教家としての生涯が始まりました。同25年には警視庁監獄教誨師となり、同27年には特派布教師として日清戦争第一軍に付属し戦地布教に従事しました。又、学者肌の一面もあり、同35年には教導講習院兼真宗大学教授に任命されました。同36年7月に積徳寺住職を辞職、同40年6月には真宗大谷派本願寺横浜別院の初代輪番となりました。その間、明治31年頃より大正11年頃まで、真宗大谷派の当時の管長である大谷光演師（俳号句仏）の巡錫に随行長として寄り添い全国各地を布教しました。晩年大谷光演師にまつわる限定相続紛争事件に関連し句仏派の巨頭として限定相続反対運動のため活躍しましたが功成らず、且つ老令のため大正14年2月に西敎寺住職を隠退しました。（そのため上記の関東大震災で全壊した本堂の新築事業には大忍師の息子であり現住職の祖父である伊藤達師（西敎寺第2世住職）があたりました。）そして昭和13年2月20日、大忍師は横浜久保山に真宗の寺院（聞法の道場）を開き、われわれ門徒の依り処の一つをつくるという功績を残しお浄土へ還られました。
その後昭和27年4月14日には伊藤達師が還浄、達師の息子であり現住職の父である伊藤壽麿師（西敎寺第3世住職）が法務一切を継承し、住職を長きに亘り務められました。その後平成8年には壽麿師の息子である伊藤信之（西敎寺第4世住職）がその住職を継承して現在に至っております。
上記で述べたとおり、本堂は昭和初期のものが今なおしっかりとたたずんでおりますが、庫裡に関しましては狭隙となり、且つ老朽化したので、昭和54年6月より同55年5月にかけて新築し、同55年11月24日、客殿庫裡落慶法要を執り行い、現在に至っております。